○熊本大学生命資源研究・支援センターにおけるヒトiPS細胞又はヒト組織幹細胞からの生殖細胞の作成を行う研究に関する規則
(令和6年7月30日規則第238号) |
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(趣旨)
第1条 熊本大学生命資源研究・支援センター(以下「研究実施部局」という。)におけるヒトiPS細胞又はヒト組織幹細胞からの生殖細胞の作成を行う研究については、ヒトiPS細胞又はヒト組織幹細胞からの生殖細胞の作成を行う研究に関する指針(平成22年文部科学省告示第88号。以下「指針」という。)、熊本大学生命倫理憲章(平成14年6月20日制定)等に定めるもののほか、この規則の定めるところによる。
(定義)
第2条 この規則において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 生殖細胞 始原生殖細胞から精子又は卵子に至るまでの細胞をいう。
(2) 生殖細胞作成研究 ヒトiPS細胞又はヒト組織幹細胞(生殖細胞系列のものを除く。第6条第1項及び第19条において同じ。)からの生殖細胞の作成を行う研究であって、基礎的研究に係るものをいう。
(3) 胚 ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律(平成12年法律第146号)第2条第1項第1号に規定する胚をいう。
(4) ヒト胚 ヒトの胚(ヒトとしての遺伝情報を有する胚を含む。)をいう。
(5) インフォームド・コンセント 十分な説明に基づく自由な意思による同意をいう。
(生殖細胞作成研究の要件)
第3条 生殖細胞作成研究は、次に掲げる要件を満たす場合に限り、行うことができるものとする。
(1) 次のいずれかに資する基礎的研究を目的としていること。
イ ヒトの発生、分化及び再生機能の解明
ロ 新しい診断法、予防法若しくは治療法の開発又は医薬品等の開発
(2) 生殖細胞の作成を行うことが前号に定める研究において科学的合理性及び必要性を有すること。
(研究実施部局の要件)
第4条 研究実施部局は、生殖細胞作成研究を行う者に生殖細胞の作成に関する倫理に関する講習その他必要な教育を受けさせるものとする。
2 研究実施部局は、生殖細胞の作成に関する資料の提出、調査の受入れその他文部科学大臣が必要と認める措置に協力するものとする。
(行ってはならない行為)
第5条 作成された生殖細胞を取り扱う者は、当該生殖細胞を用いてヒト胚を作成してはならない。
(生殖細胞の取扱い)
第6条 研究実施部局は、ヒトiPS細胞又はヒト組織幹細胞から作成した生殖細胞を譲渡する場合には、当該生殖細胞の取扱いについて、譲渡先との契約その他の方法において次に掲げる事項が確保されることを確認しなければならない。
(1) 生殖細胞は、次のいずれかに資する基礎的研究に用いられること。
イ ヒトの発生、分化及び再生機能の解明
ロ 新しい診断法、予防法若しくは治療法の開発又は医薬品等の開発
(2) 生殖細胞を用いてヒト胚を作成しないこと。
(3) 生殖細胞を他の機関に譲渡しないこと。
(4) 生殖細胞を譲渡した研究実施部局が、前各号に掲げる生殖細胞の取扱いの状況について、必要に応じ、譲渡先から報告を求めることができること。
2 前項の規定に基づき研究実施部局が生殖細胞を譲渡しようとするときは、当該研究実施部局において生殖細胞作成研究を総括する立場にある者(以下「研究責任者」という。)は、あらかじめ、当該研究実施部局の長の了承を求めるものとする。
3 研究実施部局の長は、前項の了承をするに当たっては、作成された生殖細胞の譲渡が第1項の規定に適合していることを確認するものとする。
4 研究実施部局の長は、第2項の了承をしたときは、速やかに、その旨を倫理審査委員会(指針第10条第2項に規定する他の研究機関によって設置された倫理審査委員会をいう。以下同じ。)及び文部科学大臣に報告するものとする。
(研究実施部局の長)
第7条 研究実施部局の長は、次に掲げる業務を行うものとする。
(1) 研究実施部局が行う生殖細胞作成研究に関する計画(以下「研究計画」という。)及びその変更の妥当性を確認し、第9条から第12条までの規定に基づき、その実施を了承すること。
(2) 生殖細胞作成研究の進行状況及び結果を把握し、必要に応じ、研究責任者に対しその留意事項、改善事項等に関して指示を与えること。
(3) 生殖細胞作成研究を監督すること。
(4) 研究実施部局においてこの規則を周知徹底し、これを遵守させること。
2 研究実施部局の長は、研究責任者を兼ねることができない。ただし、研究実施部局の長が指名する者が前項の業務を代行する場合は、この限りでない。
3 前項ただし書の場合において、この規則の規定(前項を除く。)中「研究実施部局の長」とあるのは、「研究実施部局の長の業務を代行する者」と読み替えるものとする。
(研究責任者)
第8条 研究責任者は、次に掲げる業務を行うものとする。
(1) 生殖細胞作成研究に関して、内外の入手し得る資料及び情報に基づき、研究計画又はその変更の科学的妥当性及び倫理的妥当性について検討すること。
(2) 前号の検討の結果に基づき、研究計画を記載した書類(以下「研究計画書」という。)又は研究計画の変更の内容及び理由を記載した書類(第12条において「研究計画変更書」という。)を作成すること。
(3) 生殖細胞作成研究を総括し、及び当該生殖細胞作成研究を行う者(研究責任者を除く。以下「研究者」という。)に対し必要な指示をすること。
(4) 生殖細胞作成研究が研究計画に従い適切に実施されていることを随時確認すること。
(5) 前各号に定めるもののほか、研究計画を総括するに当たって必要となる措置を講ずること。
2 研究責任者は、一の研究計画ごとに1名とし、生殖細胞の作成に関する倫理的な認識及び十分な専門的知識を有するとともに前項各号に掲げる業務を的確に実施できる者とする。
(研究実施部局の長の了承)
第9条 研究責任者は、生殖細胞作成研究に当たっては、あらかじめ、研究計画書を作成し、研究計画の実施について研究実施部局の長の了承を求めるものとする。
2 研究計画書には、次に掲げる事項を記載するものとする。
(1) 研究計画の名称
(2) 研究実施部局の名称及びその所在地並びに研究実施部局の長の氏名
(3) 研究責任者の氏名、略歴及び研究業績
(4) 研究者の氏名、略歴及び研究業績
(5) 生殖細胞作成研究の目的及びその必要性
(6) 生殖細胞作成研究の方法及び期間
(7) 生殖細胞の作成の用に供される細胞に関する説明
(8) インフォームド・コンセントに関する説明
(9) 細胞の提供者の個人情報の保護の具体的な方法
(10) その他必要な事項
(倫理審査委員会の意見聴取)
第10条 研究実施部局の長は、前条第1項の規定に基づき、研究責任者から研究計画の実施の了承を求められたときは、その妥当性について倫理審査委員会の意見を求めるとともに、当該意見に基づき研究計画のこの規則に対する適合性を確認するものとする。
(文部科学大臣への届出)
第11条 研究実施部局の長は、研究計画の実施を了承するに当たっては、前条の手続の終了後、あらかじめ、当該研究計画の実施について文部科学大臣に届け出るものとする。
2 前項の場合には、研究実施部局の長は、次に掲げる書類を文部科学大臣に提出するものとする。
(1) 研究計画書
(2) 倫理審査委員会における審査の過程及び結果を示す書類
(3) 倫理審査委員会に関する事項を記載した書類及び倫理審査委員会の構成、組織及び運営並びにその議事の内容の公開その他研究計画の審査に必要な手続に関する規則の写し
(4) この規則の写し
(研究計画の変更)
第12条 研究責任者は、第9条第2項第1号、第3号及び第5号から第9号までに掲げる事項を変更しようとするときは、あらかじめ、研究計画変更書を作成して、研究実施部局の長の了承を求めるものとする。この場合において、了承を求められた研究実施部局の長は、当該変更の妥当性について倫理審査委員会の意見を求めるとともに、当該意見に基づき当該変更のこの規則に対する適合性を確認するものとする。
2 研究実施部局の長は、前項の了承をしたときは、速やかに、研究計画変更書並びに当該変更に係る倫理審査委員会における審査の過程及び結果を示す書類を添付して、その旨を文部科学大臣に届け出るものとする。
3 研究実施部局の長は、第9条第2項第2号に掲げる事項を変更したときは、速やかに、その旨を文部科学大臣に届け出るものとする。
4 研究責任者は、第9条第2項第4号又は第10号に掲げる事項を変更しようとするときは、あらかじめ、研究計画変更書を作成して、研究実施部局の長の了承を求めるものとする。
5 研究実施部局の長は、前項の了承をしたときは、速やかに、研究計画変更書を添付して、その旨を倫理審査委員会に報告するとともに、文部科学大臣に届け出るものとする。
(進行状況の報告)
第13条 研究責任者は、少なくとも毎年一回、生殖細胞の作成状況を記載した生殖細胞作成状況報告書を作成し、研究実施部局の長に提出するものとする。
2 研究実施部局の長は、前項の生殖細胞作成状況報告書の提出を受けたときは、速やかに、その写しを倫理審査委員会及び文部科学大臣に提出するものとする。
(生殖細胞作成研究の終了)
第14条 研究責任者は、生殖細胞作成研究を終了したときは、速やかに、作成した生殖細胞を廃棄するとともに、生殖細胞作成研究の結果を記載した研究終了報告書を作成し、研究実施部局の長に提出するものとする。
2 研究実施部局の長は、前項の研究終了報告書の提出を受けたときは、速やかに、その写しを倫理審査委員会及び文部科学大臣に提出するものとする。
(生殖細胞の作成の用に供することができる細胞の要件)
第15条 生殖細胞作成研究において生殖細胞の作成の用に供することができる細胞(当該細胞がヒトiPS細胞である場合には、当該ヒトiPS細胞の作成の用に供されるヒトの体細胞を含む。)は、次に掲げるものに限るものとする。
(1) 生殖細胞の作成を行うことについてのインフォームド・コンセントを書面により受けている細胞
(2) 外国から提供される場合には、当該外国における法令又はこれに類するガイドライン及び当該細胞の提供に関する条件において当該細胞からの生殖細胞の作成を行わないこととされていない細胞
(インフォームド・コンセントの手続)
第16条 研究実施部局は、細胞の提供者に対しインフォームド・コンセントに係る説明を実施するに当たっては、次に掲げる事項を記載した説明書を提示し、分かりやすく、これを行うものとする。
(1) 細胞の提供を受ける目的及び研究の方法
(2) 提供者の個人情報の保護の具体的な方法
(3) 提供者が将来にわたり報酬を受けることのないこと。
(4) 提供された細胞について遺伝子の解析が行われる可能性がある場合には、その旨及びその遺伝子の解析が特定の個人を識別するものではないこと。
(5) 作成された生殖細胞を用いてヒト胚を作成しないこと。
(6) 提供された細胞から得られた研究成果が学会等で公開される可能性のあること。
(7) 提供された細胞から有用な成果が得られた場合には、その成果から特許権、著作権その他の無体財産権又は経済的利益が生ずる可能性があること及びこれらが提供者に帰属しないこと。
(8) 提供又は不提供の意思表示が提供者に対して何らの利益又は不利益をもたらすものではないこと。
(9) インフォームド・コンセントの撤回の方法及び手続
(10) その他必要な事項
2 研究実施部局は、提供者からインフォームド・コンセントを受けるに当たっては、提供者が置かれている立場を不当に利用してはならない。
3 研究実施部局は、未成年者その他同意の能力を欠く提供者から細胞の提供を受ける必要がある場合には、代諾者となるべき者(当該提供者の親権を行う者、配偶者、後見人その他これに準じる者をいう。)のインフォームド・コンセントを受けるものとする。
(個人情報の保護)
第17条 研究実施部局の長は、細胞の提供者の個人情報の保護に関する措置について、個人情報の保護に関する法令等を遵守するほか、人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(令和3年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号)に準じた措置を講ずるものとする。
(成果の公開)
第18条 生殖細胞作成研究により得られた成果は、原則として公開するものとする。
2 研究実施部局は、生殖細胞作成研究により得られた成果を公開する場合には、当該研究が指針に適合して行われたことを明示するものとする。
(雑則)
第19条 この規則に定めるもののほか、iPS細胞又はヒト組織幹細胞からの生殖細胞の作成を行う研究に関し必要な事項は、研究実施部局の長が別に定める。
附 則
この規則は、令和6年7月30日から施行する。